相続手続き支援の記事
『おひとりさまの遺言有無を確認する実務ガイド ― 調査・手続・複数遺言の取り扱いは?』20250920時点(24)

目次
1. はじめに
今回は、おひとりさまの遺言有無を確認する実務ガイド ― 調査・手続・複数遺言の取り扱いという内容の記事となります。
経験する機会は、限られます。
しかし、知識として確認しておくことは大切かと思います。
尚、この記事を作成するにあたり、chatGPT(有償版)を使用しています。
2. 初動対応の鉄則:遺産を動かさず証拠を保全する
まず「遺言があるか不明」の局面では、相続人候補が慌てて遺産の処分や名義変更・解約をせず、死亡の事実と相続人関係の確認(戸籍収集)を進めつつ、遺言有無の調査計画を立てることが肝心です。
封筒入りの自筆証書らしき書面を見つけても、勝手に開封せず家庭裁判所での「検認」を申し立てるのが原則(保管制度・公正証書は検認不要)で、違反開封は過料の対象になり得ます。
遺品の配置や封印状態、同居人・介護事業者・ケアマネからの聞き取りを記録し、金融機関・不動産・証券の現況は一時的に凍結、発見物の写真・保管場所・日時・立会人をメモ化して相続人間で共有し、
紛争の芽を早期に摘みましょう。
施錠や鍵の管理、郵便物の転送設定、公共料金の停止・継続判断、葬儀費用の立替記録など「現場保全」と「後日の説明可能性」を意識し、市役所の死亡届・火葬許可取得、戸籍除籍・改製原戸籍の連続取得で
相続関係説明図の土台を整え、遺言探索が終わるまで軽々に遺産分割協議を始めないことが、安全運転の第一歩です。
相続人が極めて少ない・不在か不明な場合は、将来の相続財産管理人選任や特別縁故者への分与に発展する可能性もあるため、初動記録を徹底し、第三者への情報提供は最小限にとどめ、鍵や印章・通帳の所在は
責任者を定めて一元管理すると安全です。
3. 自筆証書遺言の調査:自宅・デジタル痕跡・法務局保管制度照会
自筆証書遺言の調査は、①自宅(机・書棚・金庫・仏壇・遺品箱・通帳や印鑑の近傍)、②貸金庫、③デジタル痕跡(PC・スマホ・クラウド・メール・メモアプリ・スキャナ保存・写真フォルダ)を丁寧に当たり、
封書や「遺言」「エンディングノート」「相続」と題したファイル、USB等の媒体を探索します。
加えて、2020年開始の法務局「自筆証書遺言書保管制度」を前提に、相続人等が死亡記載のある戸籍・本人確認書類等を備えて全国照会し、存在が判明すれば保管先で閲覧や遺言書情報の証明書交付を受けます。
照会には被相続人の氏名・生年月日・本籍等の同定情報が必要で、代理人申請や郵送を取り扱う取扱庁もあります。
保管制度にある遺言は検認不要で、改ざんリスクが低く内容確定が速いのが実務上の大きな利点です。
自宅保管の自筆証書が見つかった場合は、封印やホチキス留めの状態を撮影して保全し、開封前に検認申立てを行い、訂正の方式・日付・押印・全文自書の成否を確認、付箋・下書き・コピーは原則遺言にならない点や、
疑義があれば専門家へ画像共有のうえ筆跡・改ざんの観点で精査する方針をとりましょう。
4. 公正証書遺言の調査:公証役場検索と謄本交付の進め方
公正証書遺言の調査は、全国の公証役場で運用される遺言検索(公証人連合会システム)を利用するのが確実です。
相続人等が死亡の記載入り戸籍や相続関係の分かる戸籍類、身分証・印鑑を持参(郵送・オンライン予約を認める役場もあり)して照会すると、該当の有無と作成公証役場が判明し、同役場で正本・謄本の交付や
内容確認が可能になります。
どの公証役場でも検索は受け付けられるのが通常で、作成役場が遠方でも郵送交付の活用で迅速化が図れます。
公正証書は公証人関与で方式・日付が明確、かつ検認不要のため、発見後の相続手続(遺言執行者の就職・金融機関の相続手続キット取得・不動産登記準備)が進めやすく、複数作成がある場合は最新謄本の内容が
基準になります。
検索結果は「有無」と作成場所の特定にとどまることが多いため、最終的な確定は作成役場での謄本交付や閲覧をもって行い、本人確認・手数料・交付方法・所要日数は事前に役場へ確認します。
受遺者・遺言執行者・証人からの聞き取りで背景事情を補強し、秘密証書遺言と混同しない(秘密証書は検認要)という基本線も忘れないでください。
内容に関する疑問点は、作成時の関与者の範囲や署名・押印の確認可能性を役場に相談し、その回答を記録化して後続手続の拠りどころにします。
5. 複数遺言の整理:後の遺言優先と条項整合の実務ポイント
複数の遺言が見つかった場合は、各遺言の方式(自筆・保管制度・公正証書)と作成年月日・署名押印・本文の整合を精査し、民法の原則である「後の遺言による抵触部分の撤回」を適用して、新しい遺言を矛盾部分
に限り優先します。
他方、抵触しない条項は併存し得るため、包括遺贈と特定遺贈、負担付遺贈、祭祀主宰者指定、相続分指定、遺言執行者指定、付言事項(希望・感謝・寄付方針)の法的拘束力の限界を踏まえつつ、
別紙財産目録の参照関係や条項の優先順位を読み直して全体整合を図ります。
たとえば、旧遺言で「全財産を長男に包括遺贈」、新遺言で「自宅は長女へ特定遺贈」とされていれば、自宅部分のみ新遺言が優先し残余は旧遺言が維持されるのが基本形です。
訂正方式不備や偽変造の疑義、破棄・隠匿の主張があれば家庭裁判所・専門家と連携し、医療機関・介護施設で同日異文書がある場合の真意解明、予備的遺言・代替条項の解釈、共同遺言禁止との関係、
遺留分侵害額請求の可否・期間制限も同時に検討し、遺言執行者が複数指定されるときの調整も先に決め、部分執行の先走りは避けてください。
日付が同一の場合は作成時刻・通し番号・立会人の証言・作成経緯資料で先後関係を推定し、結論が割れる場合は調停・審判を通じて先後関係の確定を求めましょう。
6. 工程と期限管理:探索と並行して進める相続手続の全体設計
実務の段取りとしては、
①遺言探索と並行して相続人確定・相続財産目録の素案作成(残高証明・名寄帳・固定資産課税明細・評価証明・証券残高・保険契約照会・貸金庫の有無確認・借入金の債権者照会等)
②遺言が有効で遺言執行者がいる場合は就職受諾を確認し指示に従って速やかに執行
③遺言が無い・一部のみのときは法定相続分を起点に遺産分割協議へ移行
④期限管理(相続放棄等の熟慮期間3か月、被相続人の準確定申告4か月、相続税申告10か月)と相続登記申請義務化への留意(原則3年以内)を徹底します。
預貯金の仮払い制度・未支給年金・高額療養費・葬祭費等で生活資金を確保し、デジタル資産やサブスクの停止、公共料金・携帯回線・各種ポイントの解約履歴も保存します。
相続人間の連絡体制(代表者・議事録・共有フォルダ)を整え、金融機関・証券会社の一括照会や公的照会を段階的に使い、負動産が濃厚なら相続放棄や相続土地国庫帰属制度の検討も早めに行い、
万一後日遺言が出現した場合の協議・登記や金融手続のやり直しリスクを最小化しましょう。
専門家の関与下で工程表・期限表・必要書類チェックリストを作ると、抜け漏れが減り説明責任も果たしやすくなります。
7. 最後に
お悩みのある方は、まず、弊所においてもご相談を受け付けております。(フォームからの一次返信までは無料です。)
お話を伺い、アドバイスをさせていただいております。(有償対応となります)
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